原産地

じゃがいもの原産地は南米のアンデス高原で、インカの重要な食用作物でした。16世紀にスペイン人によりヨーロッパに持ち込まれ、当初は観賞用でしたが、次第に食用にもなり18世紀には主要作物として盛んに生産されるようになりました。

日本、長崎県への伝来

日本への渡来は、1600年前後で、ジャカルタを東洋貿易の拠点としていたオランダ人が船にじゃがいもを積んで長崎に持ち込んだことに始まり、「ジャガタライモ」と呼ばれました。じゃがいもの名の由来は、これから来たようです。
長崎伝来後は、17世紀から19世紀にかけて数多くの飢饉が発
生しましたが、ばれいしょは冷涼な気候を好むことや痩せた土地でも栽培が可能などの特徴から、冷害による飢饉の際の救荒作物として栽培が試みられていました。

主要産地の推移

長崎県のばれいしょ生産量は、10万tあまりで全国2位の産地となっています。しかし、ばれいしょ伝来後の江戸時代、長崎県での栽培記録はあまり残っておらず、わずかに栽培されていたのみと考えられます。
長崎県で本格的に栽培が始まったのは、明治以降であり、統計も明治16年から残っています。明治初期は居留外国人向けだったため、長崎市内での栽培に限られていました。明治中期には東南アジアを中心に輸出が行われるようになった背景から、長崎港周辺の西彼杵半島を中心に産地が形成されました。その後、昭和初期までは輸出の増加に伴い産地も橘湾沿いに拡大し、北高来郡(現在の飯盛町周辺)や南高来郡(雲仙市、南島原市、諫早市)など、現在の主要産地が形成されました。

機能性

機能性成分として、でん粉やビタミンC、カリウム、食物繊維、有色色素のアントシアニン、カロテノイドなどがあります。
ばれいしょの主成分であるでん粉は、固化温度が低く、白度・透明度が高い特性があり、血糖上昇抑制効果、整腸作用などがあることが分かっています。豊富に含まれるビタミンCは、抗酸化作用や免疫力上昇の効果があるとともに、でん粉で保護されるため加熱調理後の残存率が高く、利用率が高い特徴があります。カリウムには体内に余分に含まれるナトリウムを排出し、血圧上昇を抑制する作用があります。食物繊維は難消化性多糖が主であり、整腸作用や脂質代謝改善などの効果があると報告されています。
特定のばれいしょに含まれる成分としては赤や紫など有色ばれいしょの色素成分であるアントシアニンがあります。馬鈴薯研究室で育成し、平成21年に品種登録された「西海31号」にはこのアントシアニンが豊富に含まれており、抗酸化活性や活性酸素除去、抗腫瘍効果、動脈硬化予防効果などが知られています。そのほか、橙黄肉系品種に豊富に含まれているカロテノイドには抗酸化活性があることが知られています。

主な種類と特徴

男爵薯
春に植え付けて秋に収穫する
北海道の食用じゃがいもの代
表的な品種です。球形で、皮は
黄白色、やや芽のくぼみが深く
肉の色は白色、肉質は粉質で
食味がよい品種です。ふかした
り、潰してサラダやマッシュポ
テトにするのに最適です。

メークイン
長卵形で皮は黄白色で芽のく
ぼみは浅く、肉の色は淡い黄色
で、肉質は緻密で食味のよい
品種です。煮崩れしにくいた
め、煮込み料理や炒め物、揚げ
物に向いた品種です。

デジマ
九州各地の産地で多く栽培さ
れています。球形で淡い黄色で
芽のくぼみは浅く、肉の色は淡
い黄色です。

ニシユタカ
西南暖地で多く栽培されてい
ます。‘デジマ’から育成された
品種のため、‘デジマ’と同じよ
うな特性を持っていますが、肉
質がやや硬いので串を刺すお
でんや揚げ物などの料理に向
きます。春によく新じゃがとし
て店頭に並びます。

トヨシロ
ポテトチップスに向いた品種です。皮をむいたときロスが少ないよう芽が浅く、肉の色は白く、還元糖の含有量が少ないため油で揚げても褐色のしみになることが少ないので、家庭でのフライにも向いています。

コナフブキ
でんぷん原料用の品種です。なお、じゃがいものでんぷんはその特性から、かまぼこなどに利用されています。

○主要品種構成(平成23年)

※参考文献
・「長崎県農林産物の伝来と歩み」平成25年3月
 長崎県農林技術開発センター
・「野菜ブック」食育のために 独立行政法人農畜産業振興機構

※写真提供:長崎県農林技術開発センター

▲ ページのトップへ